Summer Love
夏の恋──熱と憧れのことば
今号では、名作の背景にある「文化の深層」と、ネイティブが会話に忍ばせる洗練されたニュアンスを紐解きます。今回のトピックを少しだけご紹介[有名なコンテンポラリーアート、詩、音楽が奏でる、言葉の向こう側の世界]視覚的にも、より美しく、読みやすくスタイルを一新しました。エッセイとネイティブリンクで、あなたの感性にワンランク上の輝きを。美しく切ない知性の世界へ
炎天の遠き帆や我が心の帆
山口誓子
Here, a dear statement of love, or is it more just that wistful longing? A quick look brings me first to the heat, the sun glaring down, 炎天. On another look, I can read the overdone emotions of youth, yes! But also the agony of defeat. This haiku itself was crafted in the wake of World War 2. A world once known now gone as the sail of one's heart -- 我が心の帆. Yet, the structure left ambiguous enough that a reader not knowing the time or place could easily be forgiven for construing the emotions here as more "Tanabata" than nationalism. More youthful "summertime love" than lost identity. More "emotions swayed by heat" than life marred by fate. 。。。
上の英文を日本語で読む
これは恋の一句なのでしょうか。それとも、ただ届かないものへの切ない憧れなのでしょうか。
まず心をつかまれるのは、「炎天」という二文字です。照りつける夏の太陽。その熱気が、一気に立ち上がってきます。けれど、もう一度読み返してみると、そこには若さゆえの大げさな感情だけでなく、何かを失ったあとの痛みも感じられます。
この句が詠まれたのは、第二次世界大戦後のことでした。かつてあった世界はすでに遠くなり、「我が心の帆」もまた、手の届かない場所へ流されていく。そんなふうに読むこともできます。
とはいえ、この句は一つの意味だけに閉じられてはいません。時代背景を知らずに読めば、国家や失われたアイデンティティの物語というより、七夕のような、夏の切ない恋の句にも見えてきます。失われた国や過去よりも、若い日の恋。運命に傷つけられた人生よりも、暑さのなかで揺れる心。そのどちらにも読めるのです。
この一句を入り口に、このLanguage Guideでは、
- 夏・恋・感情をめぐる語彙とコロケーション
- 作品を深く読むための5つのGrammar Points
- 音声とアクティビティで学ぶStudy Portal
- 京都と長野の風景、20世紀初頭のアートから現代ロサンゼルスの作品、そして音楽へとつながる、小さな知の旅
そうした出会いをたどりながら、一つの俳句から広がる「夏・恋・運命」の世界を、英語でゆっくり味わっていきます。
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Sailboats (c. 1919), César Herrer